大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2217号 判決

依つて按ずるに、原審引用挙示に係る中村鉱一の領置証書は、同人が麻薬取締官として、塩酸トロパコカイン注射液九百三十七管を領置した旨の書面であつて、右の作成名下の捺印を欠如しているが文字の訂正箇所には捺印があり、其形式内容から看て明かに公務員が其職務上証明することのできる事実に就て、其公務員の作成した書面であると認められるから正に刑事訴訟法第三百二十三条第一号所定の要件を具備するものと謂わなければならない。弁護人は作成名義人の捺印を欠いた書面は刑事訴訟規則第五十八条に則り証拠とすべからざるものであると論ずるが、同条は其文意に徴しても推認せられる通り一種の訓示規定であつて、其方式の一を欠如したからと謂つて、直ちに公文書なる性質を失い、または証拠能力を喪失する趣旨の規定では無い。書面の証拠能力は一に刑事訴訟法第三百二十一条以下の規定に従つて解釈すべきであつて、公務員が其職務上証明することのできる事実に就て作成した書面と認められる以上は例令捺印を欠如していたとしても同法第三百二十三条所定の書面に外ならないのであるから、原審が中村鉱一作成の領置調書を罪証として引用挙示したことは何等の違法が無い。

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